突然

 昔の歌を聴きたくはない
 あの日が二度と戻らないかぎり


土用波の季節にはまだ早いが、ふとこのフレーズが脳裏に浮かぶ。



ZARD坂井泉水さんの訃報を聞いて取り出したのは、カセットではなくミニディスク。99年に出されたアルバムを録音したものである。その中で1曲だけ、イントロが始まった瞬間に飛ばしていた作品がある。「マイ フレンド」、96年の確か年明けに出された曲だったように思う。当時僕らは小学六年生。とある同級生の提案により、卒業式でこの曲を歌うことになった。歌の名前を見て納得しかけたが、配られた歌詞を読んだ僕は愕然とした。何故?と。「ひとりでいる時の寂しさより二人でいる時の孤独のほうが哀しい」という言葉の意味もわからなかった。捻くれ者だった僕は結局、歌わなかった。その時に感じた不思議な満足感は、時が経つにつれ虚しさに変わっていく。



今日この曲を何度も聞き返すうちに、すっかり忘れていたあの感覚を思い出してしまった。懐かしさに浸り切れないのは、「訃報」という悲しいきっかけのせいだけではなさそうだ。なんとなく舌打ちをしたくなる。



突然の風に吹かれて、旅人は行く先を知らない。「月日は百代の過客」とは芭蕉の言葉だが、行きかふ年は「あの青い空のよう」なものであるような、気がする。