雪見酒

東京で雪が降ると、その年は何かしら良いことが起こる。第一モテ期の小4の冬も大雪だったし、中学受験の冬も大寒波が訪れていた。待ちに待った高校入学直前の冬も、浪人が止まったセンター試験当日も、就職が決まった後の冬も、やっぱり雪が降っていた。生まれた年の冬も稀にみる厳冬だったようだ。今年もやっぱり何か良いことが起こる気がする。


 部長「雪も降ってるし早く帰りなよ今日は」
 ぶー「はい。今あんまり帰れる状況に無いんですけど、まぁ適当に切り上げます。」
 部長「あ、あと明日雪かきすることになりそうだから8時出社で」


今日も会社行事で8時出社、これで連日早起きか。嫌でもテンションが上がるシチュエーションだ。さすれば!と、とにかく明日できる仕事をすべて放置して帰り支度。閉店間際のスーパーで半額シールのついた刺身をカゴに入れ、その勢いで取っておきの日本酒をあける。ベランダから外を眺めると、白く染まった隣家の屋根が妙に色っぽい。子供じみてはいるけれど、明日の朝がやっぱり楽しみで仕方ない。