白黒模様

外を見たら雪景色、途端に気分が高まった。法事だというのにウキウキしながら駅まで歩く。既に足元は冷たい。



お経を読むってのは生きている人のためにある。というわけで、法要では例に違わず?坊さんの声明に合わせ、皆で配られた冊子を片手にお経を読む。が、一度目はめくり損なって、二度目は先を読もうとして、三度目は何故かわからないけれども冊子を床に落としてしまった。アコーディオンのような形だったので、拾おうとするとパタパタと広がってどうも始末が悪い。ままよ!と鷲掴みして座りなおすこと三回、まぁ三度までは仏様も許してくれるだろう。「さっき寝てたでしょ」いや寝てねーよ。で、法話の後は食事をしながら故人を懐かしんで昔話、やはり故人の存在は今も大きい。あと雑談。



「最近どうも消化器がいけない」「あらら、私は循環器ですよ」
「薬4種類も飲まされて」「なになに、私なんて9種類です」
「次は十三回忌ですか、何人減りますかね」



昼間から禅寺で雪見酒とは洒落てますよね、と言ったらやたら酒を勧められた。携帯で雪景色を写真におさめるご老人方に軽く衝撃を受けながら、しんしんと飲む。仲の良いおじーちゃん達は、かなりお酒を召し上がったのに「タクシー会社も忙しいんだよ」と雪道を1キロ強歩いて駅へと向かうようだ。まぁ確かになかなか電話に出なかった。心配なので・・・とも言えず、「今のうちに足腰鍛えなきゃならんので」とお供。「やっぱり日本は明治時代に戻らないと駄目だよなぁ」と話しながら、なんとなく暖かい気持ちに包まれる。


冷たい風は酔いを醒ますが、残された想いを冷ましてはくれない。時とともに凱風となりて、動じぬ心を育むか。一つの道を貫くもまた、この一筋の風に似たり。我かくの如くありたしと念ずるも、頭上には分厚き雲かかりて、その高みを眼中に映すことなし。ペロリペロリと雪の粒を舐めながら家に帰った僕は、小さな雪だるまを作ってベランダに置いた。まぁ今日くらい感傷に耽ってもいいよね。